内閣機能の強化[行政改革会議最終報告より抜粋]

1 基本的な考え方

(1)     内閣機能強化の必要性

 「行政各部」中心の行政(体制)観と行政事務の各省庁による分担管理原則は、従来は時代に適合的であったものの、国家目標が複雑化し、時々刻々変化する内外環境に即応して賢明な価値選択・政策展開を行っていく上で、その限界ないし機能障害を露呈しつつある。いまや、国政全体を見渡した総合的、戦略的な政策判断と機動的な意思決定をなし得る行政システムが求められている。これを実現するためには、内閣が、日本国憲法上「国務を総理する」という高度の統治・政治作用、すなわち、行政各部からの情報を考慮した上での国家の総合的・戦略的方向付けを行うべき地位にあることを重く受け止め、内閣機能の強化を図る必要がある。

 

(2) 内閣機能強化の骨格

内閣が「国務を総理する」任務を十全に発揮し、現代国家の要請する機能を果たすためには、内閣の「首長」である内閣総理大臣がその指導性を十分に発揮できるような仕組みを整えることが必要である。そのため、まず、合議体としての「内閣」が、実質的な政策論議を行い、トップダウン的な政策の形成・遂行の担い手となり、新たな省間調整システムの要として機能できるよう、「内閣」の機能強化が必要である。さらに、内閣が内閣総理大臣の政治の基本方針を共有して国政に当たる存在であることを明らかにするため、「内閣総理大臣の指導性」をその権能の面でも明確にする必要がある。また、以上の強化方策を実効あらしめるため、「内閣及び内閣総理大臣の補佐・支援体制」について、内閣なかんずく内閣総理大臣の主導による国政運営が実現できるようにするとの観点から、抜本的変革を加え、その強化を図る必要がある。

 

(3) 内閣機能強化に当たっての留意事項

内閣機能の強化は、日本国憲法のよって立つ権力分立ないし抑制・均衡のシステムに対する適正な配慮を伴わなければならない。まず、国と地方公共団体との間では、公共性の空間が中央の官の独占物ではないという理念に立ち返り、統治権力の適正な配分を図るべく、地方分権を徹底する必要がある。次に、国のレベルでは、国会と政府との関係において、国会のチェック機能の一層の充実が求められ、国会の改革が期待されるところである。さらに、司法との関係では、「法の支配」の拡充発展を図るための積極的措置を講ずる必要がある。そしてこの「法の支配」こそ、わが国が、規制緩和を推進し、行政の不透明な事前規制を廃して事後監視・救済型社会への転換を図り、国際社会の信頼を得て繁栄を追求していく上でも、欠かすことのできない基盤をなすものである。政府においても、司法の人的及び制度的基盤の整備に向けての本格的検討を早急に開始する必要がある。なお、司法改革の端緒とする意味も込めて、独立行政委員会等が果たしてきた行政審判機能(準司法手続)の統合(行政審判庁構想)等についても、真剣な検討が必要である。また、適正な抑制・均衡の観点は、中央省庁の大括り再編成についても生かされなければならない。省間の力のバランスを確保するとともに、省間の政策論議についても、新たな省間の調整システムの確立など、透明なプロセスの確保が必要である。また、行政委員会の存在意義についても、このような観点から再評価がなされるべきであろう。 もとより、内閣機能の強化は、政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにし、国民による行政の監視・参加の充実に資することを目的とする情報公開法制の確立と不可分の関係にあることが留意されるべきである。