中央卸売市場について

末廣 恭子


今回のインターンを通して、姫路市中央卸売市場について興味を持ったので、調べてみた。
きっかけは特別会計についての調査だった。準公営企業に当たる姫路市中央卸売市場は特別会計として会計がなされる。特別会計の歳入・歳出・形式収支・実質収支・一般会計繰出金・法令等準拠繰出し金をエクセルで表にした。公表された決算の中で、実質収支が赤字なのは15会計中4会計。実質収支だけを見ると一見殆どが黒字のようである。一般会計からの繰出し金がなければ赤字なのが15会計中11会計。うち法令に準拠する繰出金を入れて黒字となるのが15会計中2会計。特別会計は一般会計から繰入金として補填しない限り、赤字になるものが多々あることが分かった。本来、特別会計は受益者負担の原則から、特別会計内で収支を合わせるべきもの。ところが実際は多くが繰入金による黒字化である。本当の意味での黒字に戻すにはどうすべきか。

百聞は一見にしかずという言葉もある。竹内議員に無理をお願いして9月15日早朝、実際に市場に連れて行って頂いた。市職員の方に案内して頂き朝せりを見学した後、色々伺うことができた。


 姫路市中央卸売市場外観


そもそも法準拠する繰入金とは何か。総務省の基準(地方公営企業の繰入基準等)によって認められている基準内繰入金のことだそうだ。法に準じる基準内繰入金とは、この市場の場合、総財公第31号に基づく行政指導監督費と市債関係諸費を指すようだ。行政指導監督費繰入金は必要経費の3割までが認められている((営業経費(市場管理費)−償還金等)×0.3)。また市債については、市債償還金繰入金が経費の2分の1を限度に認められている((市債償還元金+平成4年度以降の許可債に係る市債償還利子)×1/2)。姫路市の場合、行政指導監督費・市債のほかに、借地料が繰入れられている。

その借地料はどうだろう。中央卸売市場の土地のうち70.5%が借地である。総面積58400uのうち約41000uもの面積を借りているのだ。借地に要する経費は年間約1億9500万円。このうちの半額、1億円近い額を一般会計から繰り入れている。これは姫路市独自の繰入金であるため基準外となる。
価格は、地主54人の代表と3年に一度協議をすすめて決定する。平成15年度に行われた借地料の見直しによって少し下がった。しかしこの借地料の問題を残したままでは赤字改善は望めない。

そもそもこの借地料は適正価格と言えるのか。少々高すぎはしないか。財産の評価基準(適正価格)を知る手段として、路線価と固定資産税から算出する方法で調べた。卸売市場内市有地の平成15年度の固定資産税評価額から推定された固定資産税等の推定額は3390万円。一般に、地代は固定資産税の2.5〜3倍位が妥当とされているようだ。そう計算すると約8500万〜1億円となる。これなら現行賃貸料の半分以下である。

中央卸市場開設は昭和32年。以来45年以上もの年数が経過している。当初は土地を購入予定であったが、当時戦後復興に財政を回す必要があったことと、国の計画に合わせ急いで開設することになり、結果、借地方式で開業した。当時、米3石が一般的な年間収穫高のところを、借地料にその倍の米6石という契約であったことが、現在に至る高値維持の原因という。しかも借地権は市側6割、地主側4割。旧借地法に基づくもので、借主の権利も強い。そのため売却に踏み切らない地主が殆どだという。

ところが地主の中には現行の借地料に納得いかない人もいる。建築物の有無や場所に関わらず、借地料は面積に比例したものとなるためだ。これ以上の歳出を増やさない為に、借地の早急な買取りをするべきではないか。そうすれば繰入金の割合も減り、赤字も将来的にはなくなると思われる。

また、卸売市場法についても調べてみた。卸売法は2004年6月に改定されている。

卸売市場法改正要点(抜粋)
5.卸売業者、仲卸業者の経営体質の強化
(1)仲卸業者の経営健全化措置の導入
仲卸業者の経営体質の強化を図るため、経営の自己管理の目安となる財務基準を設定し、経営悪化した場合に早期改善措置を講じていくための仕組みを業務規程で位置付ける方向で検討する。

上記にある財務基準について、農林水産省・近畿農水局に問い合わせた。中央卸売市場自体の財務基準も明確にされ、水産65000t、青果35000tが基準となった。(卸売市場整備基本方針より)これにより基準を満たさない場合、地方卸売市場への転換を迫られることになるのだが、姫路市の場合は水産76207t、青果63047t(平成15年度)と満たされている(他にも基準があるが、当面大丈夫ということらしい)。

しかし近年の市場取扱金額・取り扱い数量が下がりつつある為、迂闊に安心はできない。5年以上に渡って対前年度比が90%台となっている。歳出は借地料の改定に伴い、減ってきているが、歳入も年々減っている。中央卸売市場の歳入は市場利用料(業者の通過料)、施設料(施設利用料)、繰入金(一般会計より)、国庫支出金(国からの補助金)、市債がある。取扱量が減れば、当然市場利用料や施設利用料も減るわけで、歳入の減少につながる。どうしたら市場の取扱量を増やせるのか。

中央卸売市場の傍にある会社も、以前は卸売市場を通じて原料を調達していたが、現在は中国等のアジアからの輸入が主となっている。大同青果の方にもお話を伺ったが、卸売市場に流通している姫路産のもので全国の競争に勝てるものは今のところあまりないという。



相対取引が増加している

またせりと相対の比率の差は年々開きつつある。特に水産では、せり12,7%に対し、相対87,3%である。大型量販店では殆どが相対となっている。せりには熟練の技術を要するため、せり業者の高齢化と後継者不足が問題となっている。
一般客をもっと呼び込んでもいいかもしれない。市民に市場を身近に感じてもらうための催しもある。私のインターン時には、旬のものを使った料理を紹介する「旬果旬菜教室」が行われていた。また最近魚をさばくことのできない若い人も多いことから、簡単なさばき方を紹介する「お魚教室」も開かれていた。市政広報番組でその週のお薦め品を紹介するのも良いかもしれない。

現行の課題のうち、早急な対応が望まれるのは借地料問題である。本会議でも委員会でも問題として挙げられているが、解決されないために、翌年また翌年と問題となっている。毎年問題とされながら前進していない。やはり一刻も早い借地率の低減を求めたい。


鮮魚の朝せりと競り落とされたキハダまぐろ

参考
農林水産省 http://www.maff.go.jp/sogo_shokuryo/ryuutsuu.htm