県議会決算特別委員会
平成23年10月21日 竹内質問と答弁について

質問要旨(クリックすると質問の該当箇所へ飛びます)  質問通告-前日

小問・枝問 質問趣旨・その後の措置など
1.自殺抑制の取り組みについて

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2.障害者雇用の推進について

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3.特別支援教育の充実について

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4.都市計画道路の見直しと公共交通機関の充実について

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5.総合治水対策の推進について

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6.健全な財政運営のあり方について

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質問・答弁全文


項目 質問・答弁
1.自殺抑制の取り組みについて
 昭和60年以降、1,000人前後で推移してきた本県の自殺者数は、平成10年に1,400人を超えて急増して以降、1,300人〜1,400人という高い水準を続けている。
平成22年4月に、わが会派の代表質問を受けて兵庫県は、全国に先駆けて「兵庫県障害福祉課いのち対策室」を設置し、専属の部署を設けて市町と連携した自殺防止の取組を進めており、一定の評価しているところである。
一方、厚生労働省は、平成19年以来の重点的な対策として取り組んできた、「がん、脳卒中、心筋梗塞、糖尿病」について、近年の患者数の急増を背景に「精神疾患」を加えて「5大疾病」として重点的な取り組みを行う方針を固めた。
平成20年に同省が行った調査によれば、糖尿病の患者が237万人、がん患者が152万人だったのに対し精神疾患は323万人と、いずれをも上回っていたことが、その大きな要因であるが、年間3万人を超える自殺者のおよそ9割が何らかの精神疾患にかかっていた可能性があるとの指摘もあることから「5大疾病」の位置づけとその対策の重要性が理解できる。
本県における自殺対策推進方策においては、その基本的認識として、次の2点があげられている。
1つには、「多くの自殺は、経済・生活問題、健康問題、家庭問題など様々な要因とその人の性格傾向等が複雑に関係して発生しており、自殺を図る直前には、うつ病、アルコール依存症等の精神疾患を発症するものの、うつ病等の精神疾患に対する早期発見と適切な治療によって、多くは防ぐことができる。」ということ。
2つには、「家族や職場の同僚などは、自殺のサインに気づいていることも多く、県民一人ひとりの気づきを自殺予防につなげていくことが重要」ということである。その通りだと思う。
兵庫県自殺対策推進本部会議の資料をみると、平成15〜19年における圏域別年齢調整自殺死亡率で、「男性では、但馬・丹波県民局管内が高く、女性では、淡路が高い傾向にある」と分析されている。
しかし、私が平成22年の個別の自治体や県民局ごとの数値を調べても、但馬の自治体でも、但馬県民局平均では人口10万人当たり22.3というが、香美町が9.5で、朝来市が67.6と大きく違っていることからも、エリアを区切った優先的な対処療法というよりは、各市町レベルでのきめ細かな取り組みが重要である。
現在、兵庫県いのち対策室では、「@県民の自殺予防に対する理解の促進」、「Aこころの健康保持対策(相談体制の充実等)」「Bうつ病を中心とした精神疾患対策」そして「C自死遺族支援対策」の4項目を柱に取組を進めているが、最初に申し上げた5大疾病の話を持ち出すまでもなく、私は中でもAとBが重要だと思っている。
私はフィンランドに行って自殺対策についてその取組、すなわち日照時間に関する研究や自殺のサインなど医療的ケアの先進事例による成果を勉強させてもらったことがあり、また、日本で自殺率の一番高い秋田県では、2001年度から2005年度にかけて、県下6町をモデル地区に指定して、うつ病と自殺に関する地域ぐるみの健康教育活動で、自殺率を下げることに成功したと聞いている。
さらに日本では、気候風土のほか、景気と男性の自殺に相関関係にあるとも言われており、こうした面からの対策も必要になってくるだろう。
平成22年における県内自殺者は1,359人であり、目標として「平成28年までに県内の自殺死亡者を1,000人以下に減少させる」とされている。
我が会派としても、9月に行った重要政策提言で、「マスコミとの協力体制の構築も含めた、職域、学校、地域等との連携」「相談体制の充実、精神科医療の適切な受診環境の整備等の推進」「目標達成に向けた年次計画の作成」「精神保健的な視点だけではない社会・経済的な視点をも含めた県民運動としての取り組み」などの重要性を申し述べるなど、重要なテーマとして取り組んできた案件である。
しかしながら、一方で講じられる対策が、総花的になり過ぎてはならず、施策の優先順位をきちんと付けた取り組みとすべきであるとともに、実務面でも部局間の縦割りを克服してオール県での対策であるべきこと、さらに支援対象者に関して重要なのは、より複雑な問題を抱えた人ほど、本来支援を必要としているにもかかわらず支援対象から埋没しているケースは多くあり得るということをしっかりと認識しておくべきである。
こうした課題や施策の検証等を考えるとき、県の目標達成はそんなに簡単なことではないと思われるが、政府も3万人以下という目標達成に力を入れており、積極的な取り組みを期待する意味から、本県における自殺者数の現状と目標達成に向けた決意を伺う。

(答弁)
自殺抑制の取り組みについて平成28年に1,000人以下にしたいという目標を掲げまして、総合対策を講じていこうとしています。ご指摘にもありましたように、平成10年に1,000人台に達してから1,000人を下まわったことがありません。現在1,300人前後で推移している、全国傾向と全く同様で、全国が3万人をオーバーをしたのが平成10年、それ以降3万人台が全国の傾向。理由が色々あげられているが、ご指摘のように、経済環境が厳しくなったことが一つあげられ、それに伴って、精神的な負担、うつ病が引き金になっている。半数以上の方々がうつ病で自殺になっているということであります。うつになられて自殺されるような状況の時に的確な相談体制が講じられておることが非常に重要であると私どもは考えております。そのような意味で、家族等、本人が医療機関にかかろうとしていませんが、周りの気付き、家族の気付き、その方々が的確な治療を受けられるように環境を整備してあげる、このことが必要なのではないか。つまり相談と治療へのアクセスを高めることが非常に重要なのではないかと考えています。従いまして、平成23年度も働き盛り層であるとか高齢者層の自殺が多いことを考えまして、まず地域における気付きとか見守り体制の充実を図るために、民生児童委員、愛育班を対象とした笑いということを中心にして「いのちとこころのサポーター」養成をしようといたしております。第二にうつ病対策の強化のため精神科医と一般かかりつけ医とのネットワークの構築や、特定健診時のうつチェックを実施していこうとしています。第三に地域の特性に応じた対策を展開するために市独自の相談窓口の設置や見守り人材の育成など全市町での自殺対策を強化してまいろうといたしております。この成果かどうかはともかく、今年の1月から9月末における自殺者数は、997人と昨年同期比で36人減少している、あまり胸をはるわけにはいけませんが、少なくとも成果を上げていると思っています。今後とも基本的な考え方に着目しまして、関連機関をあげて対策を講じていきたいと思っております。
県23当初予算−自殺予防対策推進事業(合計)6,095,962(千円)
2.障害者雇用の推進について 2 障害者雇用の推進について
 我が会派はこれまでも障害者雇用に関しては、「障害者雇用率制度を中心として一層の雇用拡大を図ることとし、企業に対する制度の普及・啓発、採用後のサポートや特例子会社設立への支援等を推進するとともに、福祉関係機関やハローワークとの連携を図りながら、障がい者の特性や希望に応じた職業訓練、職業指導に積極的に取り組むこと。」の大切さを提言し、取り組んできた。 
 雇用情勢の低迷が長期化している中、不況の影響を大きく受ける障害者の雇用に対しては、より実効性のある対策が急務となっている。
近年における企業の社会的責任や共生社会の実現に向けた関心が高まる中、障害者の自立支援に向けた企業の取り組みをしっかりと調査するとともに、そのノウハウを活かした支援策を講じる必要がある。
例えば、精神障害者の雇用率が低いとされる原因の一つに、企業職場の理解の低さや心の健康管理上の問題もあることから、それに対応する環境づくりも大切で、臨床心理士等の配置が急がれるという見方も多い。
本県では、障害者の就労支援に積極的な「就労応援企業」を募集・登録し、企業等における障害者雇用の理解促進を図ることとしており、平成23年10月1日現在で、542社の登録を戴いているが、今後はさらに進めて、企業職場で障害者が能力を発揮しやすい雇用・就労条件や職場環境づくりを積極的に進められるような支援と、その進展プロセスを社会的にモニタリングできる仕組みの構築などの施策展開も検討していく必要がある。
一方、部局審査の際に我が会派の掛水委員が指摘したように、改正障害雇用促進法で定められた法定雇用率1.8%について、本県は2010年実績で1.81%と辛うじて上向いているものの、極めて際どい状況にあり、間違っても法定雇用率をギリギリ達成しさえすればクリアしたかのような錯覚を抱くべきではない。
 障害の有無にかかわらず、国民誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合う「共生社会」を実現することは少子高齢化が進展し多様化が進む我が国の今後の在り方を考える上で大変重要な課題である。
そうしたことを県民に対してしっかりと周知しながら、自治体、教育機関、医療機関、企業、NPO等が実施して成果を挙げている先進事例やノウハウを活かした取り組みが必要と考えるが、障害者雇用の推進について当局の所見を伺う。

(質問)
 本県の障害者雇用率につきましては、平成12年度は1.69%でありましたが、この10年間の取り組みにより平成22年度は、1.81%となり、ようやく法定雇用率を達成したところでございます。各企業毎にみますと法定雇用率を達成したとはいえ、達成企業は6割弱であり、引き続き、障害者雇用を最大限努力していく必要がございます。このため、企業はもとより県民が障害者と共に生きる、共に働く社会に対する理解を深め、自発的な取組の機運を高めるとともに、企業に対して、障害者雇用のノウハウの提供等により、具体的な取組に繋げていくことが重要でございます。 具体的には、県といたしましても、広く、企業や県民に対して障害者雇用の社会的意義や現状の説明、雇用事例の発表、就業相談などを行う障害者雇用促進セミナーなどを県内各地で開催しております。また、優良事業所等の表彰や先進事例の発表を行う「障がい者雇用支援フェスタ」を兵庫労働局、兵庫県雇用開発協会等と共同で開催しております。 特に、企業に対しましては、昨年度、県内企業の障害者雇用に関する取組の実態を調査しまして、先進21社の取組を事例集にまとめたところでございます。この事例集では、作業方法の見直し、円滑なコミュニケーションの促進等により職場環境を改善した企業、障害者就業・生活支援センターの助言・指導を活かして障害者の職場定着を実現した企業等を紹介しております。この事例集を県内企業や関係団体等に広く配布するとともに、中小企業等に対する訪問アドバイスや地域での研修会等において活用しております。また、大企業に対しましては、障害者の職域拡大や職場定着に有効であります特例子会社の設立やその雇用拡大の支援に努めているところでございます。 今後とも、兵庫労働局や市町、社会福祉法人、その他関係支援機関等と連携し、障害者一人ひとりの就労を支援をするとともに、その後の就業状況の適切な検証などを行うことにより、障害者雇用の拡大に取り組んでいきますので、ご協力をよろしくお願いします。 
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3.特別支援教育の充実について  平成19年4月から、「特別支援教育」が学校教育法に位置づけられ、すべての学校において、
障がいのある児童生徒の支援をさらに充実する特別支援教育がスタートして以来4年が経過した。
障がいのある児童・生徒が生活や就労などの面で本来の力を発揮できる環境整備は全国的に進め
られており、特別支援教育を取り巻く環境変化が著しい中、従来の対象とされる障がいだけでなく、知的な遅れのない発達障害や、児童生徒数の約6%存在しているとされる、学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症を含めた児童生徒の自立や社会参加に向けた取り組みが、ますます重要視されている。
 しかしながら、特別支援教育を取り巻く状況は、障がいのある児童生徒の増加や、障がいの多様化による質的な複雑化が進んでいるといわれており、一方でこれに対応できる教員の人的不足や、専門性が不十分なものとなっているとの指摘もあり、これまでの取り組みをさらに工夫・拡充しつつ、様々な障がいに対応できるよう支援体制づくりや、学校種間の連携、教職員の専門性の向上などを一層進めていくことが肝要である。
 さらに、通常の学級にいる軽度の知的障害のある子どもたちが逆にエアポケットに入りつつある現状も見落としてはならず、子どもたちを落ちこぼすことのないセーフティネットとしての特別支援教育の全体的機能を、今一度考える必要がある。
 本県では、平成19年に「特別支援教育推進計画」を5カ年計画として策定し、県立特別支援学校の整備推進やLD、ADHD等の理解と支援、後期中等教育の充実、教職員の専門性の向上など、様々な取り組みを精力的に行ってきたところであるが、今後とも子どもたちの障がいの種類や程度に応じて、一人一人の個性を尊重するとともに、個人の才能を伸長して、自立に向けた成長を促すためには、障がいのある児童生徒をとりまくすべての人々が特別支援教育への理解を深め、年齢が進んで教育機関の変化(保育所・幼稚園から特別支援学校小・中・高等部への変化)により支援が寸断されることのないよう部局間の連携を図りながら、一層きめ細かく適切な支援を強化していく努力が欠かせない。
先日の教育委員会部局審査でも指摘があったように、姫路特別支援学校をはじめ県内各地の特別支援学校に関わる課題として、普通教室や運動場の不足などといった環境改善の問題なども取りざたされている中、制度から4年を経過した特別支援教育はまさに転換期にある。
特別支援教育の一層の充実化に資するため、これまでの課題の先送りで無い決意のもと、その予算確保と事業の着実な実施について、所見を伺う。

(答弁)
 学校教育法の改正以降、特別支援教育に係る環境が著しく変化してきております。そうした中で、本県では、平成19年度から特別支援教育推進計画を策定して、その推進・充実に努めてまいりました。本計画に基づきまして、たとえば特別支援学校の整備推進では、複数の障害種別に対応いたしました特別支援学校5校の再編や2校の知的障害特別支援学校の新設を行っております。また通常の学級に在籍するLD等の障害の支援体制整備では、校園内委員会の設置、また特別支援教育コーディネーターの配置等、それぞれほとんどの学校でしてまいりました。また後期中等教育の充実では、高等学校と連携した分教室の設置や交流及び共同学習の推進を行っております。さらに専門性の向上では、特別支援教育コーディネーター専門研修の充実も進めてまいりました。こういったことから、特別支援教育の体制整備は、計画上の体制整備は概ね整いつつあると考えておりますけれども、知的障害特別支援学校の児童生徒数の増加への対応や、あるいは、環境改善、さらに先ほどもお話しございましたように、雇用問題がございましたが、労働部局や、あるいは福祉部局などの関係部局によります連携して一貫した支援体制をさらに充実する必要があるのではないかと考えております。さらに福祉等の関係機関や県民等との特別支援教育に関する総合理解の推進、これもこれからますます必要ではないかと考えております。規模過大校など当面する課題につきましては、これはしっかりと着実に推進してまいりたいと、このように思っております。そして先ほどお話しございましたように、特別支援教育に対する全体的な機能というものを、もう少し考えては、というご指摘をいただきました。現在、国におきましてインクルーシブ教育システムの構築に向けた検討、 まもなく方向が出るという状況になりますが、こういった状況も踏まえながら、今後の本県の特別支援教育の在り方につきましても、今後検討しまして、特別支援教育の一層の充実を図ってまいりたいと、このように考えております。
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4.都市計画道路の見直しと公共交通機関の充実について 都市における人や物資の円滑な移動を確保するための交通機能のほか、市街地形成機能、景観形成機能など様々な役割を有する都市計画道路は、急速にまちづくりが進められた高度経済成長期に多くの計画が決定されてきたといわれるが、本県では、戦後からの高度成長期に、都市の拡大を想定して多くの都市計画道路が決定されたものの、50年以上未着手の区間が多く残されていると聞いている。
例えば、県全体の都市計画道路の延長を見ると、これまで計画された約2,500qの幹線街路のうち、未着手となっている部分が約720qに及んでおり、その割合は約28%で、特に昭和20年〜33年に決定された1,335qの幹線街路のうち、約3割にあたる396qが未着手の状態である。
老年人口の増加に伴い、今後の都市計画道路の整備には、安全・安心で快適な移動空間機能の確保など質の高い都市施設としてのニーズが求められているとはいえ、こうした状況を鑑みれば、その必要性や整備手法等の適正化等を改めて検討する必要性がある。
一方、少子高齢化や地球環境問題などの社会情勢が大きく変化する中、都市部における交通環境改善や地方部での生活の足の確保などを鑑みた公共交通ネットワークの充実が求められている。
政府は本年2月に「交通基本法の立案における基本的な論点について」を発表し、環境問題やまちづくり政策など、持続可能な交通、社会づくりに資する私鉄、バス、フェリー等の公共交通の充実・発展は21世紀に求められる国家的な重要政策と位置づけている。
本県でも、公共交通の充実や利用促進方策をひょうご交通10カ年計画としてとりまとめ、その推進を図ってきたところであるが、特に今年は策定から5年を経過した節目といえる。
バリアフリー新法に伴って、まちづくりとともに公共交通の重要性が高まっている中、生活交通バスや鉄道など、県内公共交通の廃止・削減などにより移動権が侵害されつつある現状を打ち破るとともに、買い物難民や通院難民の解消や計画で定める公共交通の輸送分担率40%達成に向け、地域で安心して暮らせる整備が重要である。
成熟社会にふさわしいまちづくの推進にあっては、地域特性に応じた新たなまちづくりの視点から、都市計画道路については、強力なリーダーシップをもって、見直すべきは見直される決断を行う一方で、公共交通機関の整備充実を一層進める取り組みが必要になってくると思われるが、所見を伺う。

(答弁)
 人口減少・少子高齢化が進む成熟社会のまちづくりにおいては、中心市街地に必要な都市機能の集積を促進するとともに、誰もが安心して利用できる公共交通機関の充実が必要である。  このため、平成16年度から、都市の発展を前提に計画された都市計画道路のうち、長期未着手のものについて見直しを行い、これまでにバイパス整備等で機能の確保された、明石市上の丸線、姫路市大野線など40区間、約29キロについて廃止等を行った。平成21年度からは、都市計画道路の更なる見直しを行うため、県が主体となって、交通処理、環境、防災面等からの評価を行った上で、市町の意向も確認しながら、検討作業を進めている。 一方、「ひょうご交通10カ年計画」においては、鉄道の高速化や安全性向上、路線バスやコミュニティバスの運行支援とともに、駅のバリアフリー化、駅前広場やパークアンドライド駐車場の整備などを位置づけており、都市計画と連携した交通結節機能やアクセスの強化にも取り組んできた。今後は、現在国会審議中の交通基本法の内容を踏まえながら、10カ年計画の見直しに向けた中間検証を行っていく。 今後とも、社会経済情勢の変化も踏まえ、バリアフリーや地球環境問題にも対応したまちづくりを目指し、県のリーダーシップのもと、自動車交通よりも歩行者や公共交通優先の視点も加え、都市計画道路の定期的見直しに取り組むとともに、さらに利便性の高い公共交通ネットワークの充実に努めていく。

5.総合治水対策の推進について 県土整備部の部局審査において我が会派の三戸委員が質問したが、改めて所見を伺う。
治水事業は、県土を保全して、水害や土砂災害から国民の生命と財産を守り、活力ある経済社会と安全で快適な国民社会を実現するための生活基盤の中でも最も優先的に整備すべき根幹的事業である。
 ごく近年だけでも2004年の台風23号や、22名の死者を出した2009年の台風9号による兵庫県西・北部豪雨などは未だその傷跡も癒えず、台風12号と15号もあわせると、いわば本県全域が台風常襲地帯ともいえるのではないかとも見まがわれる状況にあり、洪水・高潮といった水害や、地すべり・土石流・急傾斜地崩壊などの土砂災害からの防御策の取り組みが急がれることが改めて実感された。
また、近年は全国各地で局所的な集中豪雨が頻発しているなか、いわゆる都市型水害が増加しており、本県においても同様な浸水被害が増えている。
その主な要因としては、都市化の進展に伴う雨水の地下浸透の減退等によって、流域が持つ保水・遊水機能が低下し、雨水の流出量が短時間に増大することが指摘されているが、こうした都市型水害の発生を防止するためには、雨水の河川や下水道への排除のみならず、地域全体での雨水の流出抑制に取り組むことが大切で、加えて、土地利用や減災対策といったソフト対策も併行して進める必要がある。 
 本県でも、河川や下水道の整備に加えて、雨水を貯めて流出量を抑える「流域対策」、浸水被害が発生した場合でも被害を小さくする「減災対策」を組み合わせた『総合治水』の推進が重要との認識のもと、これを実現するための、「兵庫県総合治水条例(仮称)」の策定が計画されている。
これは一定規模以上の宅地開発をする業者などに調整池の整備を義務付けるほか、流域ごとに推進計画を策定するもので、都道府県単位では全国初の条例化といわれている。
台風や集中豪雨による洪水被害の多発を受け、県では従来の河川整備による対策では限界があるとして、総合的な治水対策を先駆けてまとめた武庫川水系河川整備計画を踏まえた検討を進めていたと聞くが、今後はとりわけ、ハード面の対策の限界をどのように踏まえ、県民に対する説明責任をどのように果たしていくのか、また他府県内の市が施行した条例による効果や、昨日(10/20)まで行われていた条例骨子案に関するパブリック・コメントの声を如何に分析した上で、その評価をどのように本県施策に活かそうとしているのか伺う。

(答弁)
 最近の雨はゲリラ的で集中豪雨が伴います。しかも今回の台風12号や15号のように、前線に挟まれて身動きをしないで雨だけが降る、というような現象まで生じました。こうした大きな被害、台風23号、9号そして今回の12,15号を見ますと、共通の課題があると思います。それは「山の管理」が十分になされていないということです。特に人工林に言えると思います。今回、紀伊半島で「深層崩壊」という新しい言葉まで具現しましたが、深層崩壊した山を私がTVで見るかぎり、人工林だったのではないかと思います。結局、人工林は人の手が入らないといかに弱いかを表しているのではないか。間伐をしないとヒョロヒョロとした木になる、枝打ちをしないと頭でっかちの木になる。そうした木が風雨に弱いのはあたりまえのことです。このことは、実をいうと、台風9号の2年前の23号のあと、県民の協力をいただきながら「災害に強い森づくり」を始めていますが、それを現に実施したところは被害はほとんど無かった。山崩れもなかった。それ以外のところでは結果として流木が倒れたり、土石流が流れ出てきたということがありました。そうした実証的事象も生じているので、このような事態に対して「山の管理を徹底する」ことがまず必要だと思います。あわせて、ゲリラ豪雨だとか局地的集中豪雨があるので、大切なのは、谷ごとに砂防堰堤、砂防ダムをつくり、仮に山が崩壊しても土石流や流木が沢にまでこないようにする(水は防げませんが)、そういう意味での緊急防災対策を今進めています。その対応をしたあと、水をどうするかということが、今度は基本になります。従来の水対策は河川改修だけを実施してまいりました。その弊害が台風9号で佐用で現れたのですが、河川改修のみを実施しようとすると、下流から順次積み上げていかないと上流まで達しないという矛盾があります。また、ダム自身は非常に大きな力を発揮するのですが、ダムを建設整備している期間は全く効果を発揮しません。完成してから初めて効果を発揮するという課題をもっています。そのような中で武庫川対策を進めようとしたときに、中上流部の対策もあわせてやる必要があるのではないか。佐用川の対策も、中上流部の対策をあわせてやる必要があるのではないか、ということと、ダムを優先するのではなくて、現行の必要となる対策を講じていくことがまず大事なのではないか、ということに至りまして、そして総合治水という考え方が出てまいりました。総合治水の基本は、河川改修ももちろんきちんとやっていくことが基本でありますが、あわせて、上中流部に対して二線堤ですとか、遊水池ですとか、輪中堤ですとか、そういう河川が仮に氾濫したとしても地域を守る対策も検討の素材に入れよう。それからできるだけ遊水機能を発揮させることが河川に対する負担を小さくすることにつながりますので、できるだけ遊水機能、ポケットをたくさんつくる。ということになりますと、例えば水田を活用できないかとか、あるいは空き地を活用できないか、あるいは公園だとか、校庭のような公共施設を活用できないか、あるいは川西に作りましたような公共施設の下に大きな貯留施設を作ることができないだろうか、こういうことを総合的に対応していく。これはご指摘にありました「流域対策」でありますが、こうした流域対策もあわせて講じていこう。そうするとどうしても、それぞれの権限を持っている方々の協力が不可欠になります。したがいまして、協力をいただく、その根拠的なものをきちっと体系的に用意したほうが望ましいのではないか。ということで条例化ということを検討しているところでございます。現在パブリックコメントを終えましたが、パブリックコメントで特に指摘をされておりますのは、約100件ほどの意見が寄せられたところでありますけれども、住民参加をもっと行えるように、あるいは、住民が主体的に取り組めるような協議会のようなものを作るべきではないかということが一つ。もう一つは、既存の利水ダム、これは紀伊半島でも発電用の利水ダムの活用がもう少しあって良かったのではないかとのご指摘がされていましたけれども、既存の利水ダムの活用ということももっと検討できないだろうか。それから第3番目には、そのような対策を講じるにあたっても、特にダムだと貯水するわけですので、環境への配慮ということも重要になるのではないか、項目として、そのような点についても盛り込むべきでないかというご意見もいただいているところでございます。私も9月の末に尼崎で武庫川の総合治水につきましてシンポジウムを行いました。そこで私もパネラーのひとりとして出席しておりましたけれども、そのときにも、強調されましたのが、住民参加の重要性と環境への配慮ではなかったかなと思っております。そのような意味でパブリックコメントやシンポジウムでのご意見を踏まえまして、条例の最終案を取りまとめて議会とも十分相談をさせていただきたい。そしてできれば2月議会には成案をまとめて提案をさせていただくことにしたい、このように考えているところでございます。今後ともご指導をお願いしたいと思います。あわせまして、金沢で「総合治水対策の推進に関する条例」が21年に施行されています。これは住宅における浸透貯留設備の設置ですとか、物理的なハードの整備が中心となっていますが、これはもう阪神間で助成制度を設けて実施、取り組みがされている対策でございます。あわせて水防出前講座の参加など、自治会の参加が大幅に増加するなど効果をあげているようであります。本県としても、条例の検討にあたりましては、都市型水害対策につきましても配慮が加えられるような内容を盛り込みたいと考えているものでございます。いずれにしましても、さらに河川審議会等のご意見や、県民の皆さんのご意見を頂戴しながらとりまとめたいと考えておりますので、ご理解とご指導をお願いいたしたいと存じます。
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6.健全な財政運営のあり方について
 これまで財政状況については今回の決算委員会だけでなく、本会議、予算委員会等でも多くの時間を割いて議論してきたが、今回は知事も出席されるのでマクロの話をさせていただく。
 まず、昨今の金融不安、ヨーロッパ、ギリシャの例を取り上げたい。
 ギリシャは、外国に国債を買ってもらっていたが、市場でギリシャの財政赤字が取り沙汰され、ギリシャ国債が暴落した。簡単に言うとこれがギリシャ問題、ヨーロッパの金融危機の発端で、その後、ギリシャを支援するヨーロッパ諸国の通貨であるユーロの信用が落ち、ユーロ安となり、その結果、相対的に信用があるスイスや日本にお金が流れて円高やスイスフラン高になっている。日本も多額の財政赤字を抱えているが、日本国債の外国人保有率は5%ほどとかなり低く、個人資産の方が国債残高より多いから暴落しないとも言われる。

 いずれにしろ、こうした観点から各国は財政赤字を減らす、すなわち財政収支のバランスをとろうという動きになっているが、日本やアメリカはなお赤字を続けており、増税や歳出削減ができない国、痛みから逃げる国と言われている。しかし、兵庫県は、知事や職員の給与カット、県単独福祉医療の見直しなど痛みを伴う改革を実施してきており、議会としても報酬の10%カットを継続するなど、国に先んじて取り組んできたところである。

 しかし、私が本県財政で心配するのは、財政指標・地方交付税リスクと県債総額・金利リスクであるが、やはり最大のリスクは金利
だと思っている。

 行政の場合、先物取引や外国債での運用など金利のリスクヘッジを資金運用でできる民間企業ではない。金利を自由に設定できる立場にもない。やはり県債残高という量でリスクを管理しないといけない。

 というのもフローの指標である実質公債費比率が21.2と兵庫県の21.0を抜いてワースト2になった徳島県であるが、ここの将来負担比率は238.6%と兵庫県の350.2%より111.6%も良い。実質公債費24.1とワーストの北海道でも将来負担比率では330.2と兵庫より20%もいい。兵庫県はやはりストック面での課題が数字にも現れているということである。

 本県の場合、起債が認められるものは全て起債を原則とし、通常の起債で足りない部分も行革推進債、退職手当債といった資金手当債を活用してきた。本県は、地方債の許可期限が30年となっていることから、最長では30年の超長期債も発行しているが、それより短い償還期間で満期を迎えた県債については一定の範囲で再び借換債を発行して、その償還資金を工面している状況である。つまり、当面は高水準の県債残高が維持されるものと見ている。しかし、残高が多いまま、金利が高くなれば、必然的に利払い額は増えていくことになる。現在は低金利によって助かっているが、今後金利が上がれば大変な負担になってくることは容易に想像できる。

 金利という観点から、一般会計等のほか公営企業会計も含めた支払う県債総額をみるが、全会計の21年度末県債残高4兆7032億円に対する支払利子は22年度747億円、金利は1.59%。一方の県全体の基金の受取利息は16億円。ただし、財政基金、特定目的基金や他の集約基金等の利子は、県債の償還財源には充てられないため、県債管理基金のルール積立分に限れば、2億円の受取利息しかない。差し引きをすると金利だけで745億円の支払超過となっていることになる。この利払いについては交付税措置で一定のカバーがあるため、差額そのものが県だけでなく国も負担しているということであるが、いずれにしろ、この金利リスクは厳しく見ておかなければならない。

 「第2次行革プラン」の中間目標として、「県債残高を平成25 年度末には平成19 年度末[地財33,591]の95%水準に圧縮する」という目標が掲げられている。22年度は原口総務大臣の強いリーダーシップで地方交付税の代替措置と言われる臨時財政対策債の発行が1900億円も認められたが、現在の推移を見ていると、この目標達成は容易だろう。新行革プランの想定より内容は改善傾向にあるということで、もう少し厳しい目標設定が可能になったのではと感じている。そこで本県の県債残高を縮減する取り組みについて、もう少し厳しい目標設定にすべきではないかと、また、そうしたメッセージがやや弱いのではないかという気もしているが、また、財政の最大のリスクである金利についての所見もあわせてお伺いしたい。

(答弁)
 まず新行革プランの時の実績からご報告させていただきますと、ご指摘のように県債残高、平成22年度の決算で、地方財政調査方式で述べますと、全国比較ができますので、3兆7千億でございます。20年の新行革プランでは、22年度末を3兆3,400億と見込んでおりましたので、3,630億ほど増えてしまっております。 ただ、この増えている理由は、いま竹内議員からご指摘いただきましたように、臨時財政対策債が活用された、これは交付税で元利償還100%あとでみるということになっております。それから、減収補填債を活用した。これも交付税の計算上、見込んだ法人関係税が入ってこなかったということで発行するわけでありますので、後年度交付税で措置されます。それと、ご承知のように災害復旧事業が追加になりました。これもほとんどが交付税措置がございます。それから補正予算債。補正予算債は単位費用も合わせますと実質100%交付税措置があります。こういうような要因を除きますと、わずかですが、226億ほど減ったというのが実績でございます。ただ、2兆5,545億に対して226億、1%くらいしか減ってないということでありますので、そのような意味からすると胸を張れる数字では私自身はないと思っておりますが、努力はしてきているということを申し上げたかったわけであります。 今後の動向を考えましたときに、地方債の残高の水準を私ども減らしたい、これを基本方向として考えておりますが、財政事情を判断する指標としてご承知のように実質公債費比率がございます。その実質公債費比率の率をかさ上げしてしまっているのは、県債管理基金の積立不足額でございます。従いまして、どちらをとるか、つまり県債残高の減少をとるのか、実質公債費比率の逓減をとるのか、二者、両方とも引き受けたいんでありますが、どちらを優先するのが望ましいのかということが一つポイントとしてございます。

 できれば、私は18%実質公債費比率を切るようにして、起債の許可を受けなくても協議で発行できるような団体に是非なりたいなというのも大きな目標であろうかと思っています。ただ、これから3カ年間は、いずれにいたしましても、26年度まで、国の財政再建期間が続きます。その間は、やはり厳しい財政運営が強いられると思います。従いまして、県債残高につきましても、減らすことを目標にしてまいりますけど、その具体の目標は、少なくとも第2次行革プランで見込んでいる程度は必ず達成したい、さらに実績として上積みができるような対応ができないだろうか、というのを今検討したいなと考えてございます。

 金利リスクについてどう考えているのか、これは非常に心配いたしております。特に市場が、今円高に向かっておりますので、債券を発行するのに有利な環境になっておりますが、これが円安にガタッと振り子が逆ぶれしますと金利水準が急速に上がるということも考えられないわけではありません。ただ、当面はですね、ご指摘にもありましたように、日本の状況は、外国にほとんど、県債や地方債や国債含めまして依存しておりませんので、外国の事情によって影響を受けることは少ないだろう、従って、大きな金利変動は当面は見込めないのではないかと思っておりますが、対策を講ずる必要があります。従いまして、できるだけ発行の形態を多様化したいということもございまして、30年債を発行するとか、20年債を発行するとか、というような形、それから一方で、3年債とか5年債とかも発行して資金調達をいたしております。というような多様な発行形態によりまして平均的な金利の水準をできるだけ下げていく、そして、固定金利で、例えば30年債でありますと、それは30年間固定でございますので、それを活用することによって長期的な安定が図れる、こんな対策を講じることによって努力をしていきたいと考えているものでございます。

 民間企業でやられているような先物とか、並行債券購入しておくとかも有効な対策ですが、それだけの能力を我々持ち合わせておりませんので、そこまでの対応はしない方がいいのではないかと考えております。 あわせて県債残高を低めるためには、投資水準をどの程度にしていくのかということが非常に重要です。従いまして、投資水準の見直しにつきましては、必要な投資は必ずしなければなりませんが、少し送ってもいいようなものについては送る、そして新規発行額を減らしていく、そのような対応もあわせて検討したい、このように考えている次第でございます。

(意見)
 過去の県債の内容をみますと、全体では金利1.59でございますが、公営企業会計の中の一番高いものの利率をみますと、水源開発事業会計ですか、たぶん昔借りられたと思うんですけど、4.8%と大変高い金利がかかっておりました。(金利が3%になれば支払1411億円。4.8%となれば、2257億円)。
 
金利というのは、こういう風にいつどうなるかわからない、知事のおっしゃったとおりだと思いますので、私は、総額管理をするというのは非常に重要なことだと思いますし、私は今37歳でございます。30年債ということがございました。その中で償還できれば順々に減っていくわけでございますけれども、やはり、今私たちがある意味で借金をしていろんなものを享受しているもの、それを次世代にどれだけツケを残すか、やはり少なければ少ない方が感謝をされる、ただ必要なものはやる。このお考え、知事もよくご存じだと思いますので、私は、今、これだけ頑張っていい兵庫県財政にしたということを次の世代に送っていきたい、そういう観点から質問をずっとさせていただいておりますので、その意をお酌み取りいただきまして、財政運営を引き続きやっていただきたい、そのように思っております。

■第二次行革プラン
・ 県債残高を平成30 年度末には平成19 年度末残高(33,591)の80%水準(=26,873)に圧縮
■22年度末で総務省地方財政調査方式で37,039の残高