Web版ひであき日記

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  (未定稿)フィンランドの学校を訪問!!
2008年08月25日 (火)

panda.gif ホテルからバスでヘルシンキからヴィヒティ市へ。ヴィヒティ市立KUOPPANUMMEN KOULUKESKUS(日本の小中学校にあたる基礎学校。1〜9年生。1年生は日本より1年遅い7歳で入学する)を訪問。ヴィヒティ市はヘルシンキの隣の隣にある首都圏郊外の市。人口24000人。この学校には基礎学校に入る前の1年間子供が通う「就学前施設」も併設されている。


KUOPPANUMMEN KOULUKESKUS


まず、同校でクラス担任をしているレバニエン先生と面談。レバニエン先生は女性で40代の国語教師。教師歴は15年。フィンランドでは修士課程を修了しなければ教師にはなれないためストレートで進んだ場合でも25歳ぐらいしか教師になれない。また、同先生はヴィヒティ市会議員もつとめている(現在1期目)。つまり、市議会は行政機関の職員とも兼業が認められている(ヨーロッパでは地方議員の兼業は珍しいことではない)。


教室前にはレバニエン先生の写真と担当する教科名「国語(フィンランド語)」が掲げられている


以下、レバニエン先生の話と訪問団のやりとり(竹内まとめ)。
現在、新学年が始まって2週目。フィンランドは8月中旬から新学年が始まり、5月末で学年が終るというシステムである。普通の日は日本の学校と同じように宿題があるが、2ヵ月半の夏の休みは新学年となるため宿題はない。登校日もない(一同驚く)。

(教師の体制・役割分担など)
基礎学校(小中学校)全体で教師は48人。うち男性は10人と少なめ。レバニエン先生によると、男性は出世欲のある人が多いため、女性に比べて教師を目指す比率が女性より低いのでは、という。校長1名、副校長3名。3名の副校長は小、中、特殊学級をそれぞれ担当している。他に教師の助手が51人。助手の多くは教師1人に1人つく。ただし、助手に教師の資格の必要はなく(持っている人もいる)、教師と助手は全く別の位置づけである。教師のうち17人は特殊学級(知的障害、自閉症、多動性障害ADHDなどの生徒)を担当している。

(生徒数・学級定員)
1〜9年生の全19クラス600名。1クラスの定員は現在、自治体に委ねられている。この学校の1クラスの人数は最大で28人だが、普通20人ぐらいである。語学や実習の授業などでは、2つに分けて少人数授業を行ったり、助手をつけてほしいとの要望を校長に出す。語学では1クラス20人では多すぎるのである。

(補習・留年)
カリキュラムを進める中で、取得しなければならない学力を満たさない生徒には、1週間に1時間の補習授業を行う。これは効果がある。(9年生で卒業できない場合、10年生に留年する場合もある。自主的に留年する場合もある。保護者を含め恥ずかしいという考えはない。)

(図書館)
学校内の図書館は教材関係などわずか。クラス全員で市立図書館に行く授業もあるという。各学校に図書館を整備するのは非効率。図書館には専門の司書もおり、限られた予算の中では効果的だという。

(保育園と就学前施設)
保育園(託児所)は市の福祉課が担当している。昨年まで就学前施設も福祉課が担当していたが、今年から就学前施設については、教育課が所管することになり、基礎学校を所管する教育課と一本化した。一本化の目的を政治・財政関係者はお金の節約といっているが、私はそう考えない。お金と関係なく、縦割りがなくなっていいことである。

レバニエン先生はヴィヒティ市議会議員としては、市議会生活安全・健康管理委員会に所属。市に精神衛生管理部門がないことは問題としている。現在、青少年問題が140%増にもなってきており、高校卒でも問題が増えてきている。基礎学校でもっと考えないといけないのにそうした予算が少なくなってきている。議員と教師を兼任しているのでこのあたりの問題に取り組みやすい。

(校舎建設費)
校舎建設は5年前。建設費は1800万ユーロ(約30億円。併設の就学前施設を含む)。鉄筋の建物だが中は多くの木材が使われている。


休み時間に校庭で遊ぶ子供たち。運動場は近くに別につくられているが、学校専用の施設ではない。これは効率化の観点である。


一通り説明等を受けた後、レバニエン先生の授業を見せて頂く。担任しているのは8年生(15歳)。文学の授業。プロジェクターを使いながら推理小説の内容を理解させ、犯人が誰かを生徒に発表させるというもの。犯人の名前だけでなく、そう思った理由も合わせて発表しなけれぱならないという。
 生徒は教室内では皆靴を脱いで靴下が大半である。上履きを履いてもいいそうだ。


レバニエン先生の授業風景



教室前の荷物置き場。自転車通学の子供のヘルメットや上着、靴などが置かれている


その後、授業が行われている校舎内を案内して頂く。教室や音楽室、物理、生物の実験室をはじめ、特殊学級などほぼ全ての学校施設を案内して頂く(一部写真制限あり)。今回は日本からの教育視察だが、「学校の日」に保護者や外部との交流もあるようで、学校の訪問客は珍しいことではないようだ。


家庭科(調理実習)の授業



音楽室



3年生の技術(ミシン)の授業



紙型の上に示された線に沿ってミシンを走らせている。上手である。



技術(木工)の授業風景。20人と少人数のクラスなのに、技術の時間になると半数はミシン、半数は木工と分割する。細かいところまで目が届く。



海で採集してきた生物を観察する授業をしていたN先生。「おはようございます」と。フィンランドと福井県の教員相互交流があり、福井で英語を教えた経験があるという。日本とフィンランドの教育の違いをたずねると、まず少人数学級。あと日本の子供はフィンランドの子供に比べて先生に突っ込んで質問してこないという。



この学校では最大人数(28人)のクラスの授業



本やパソコン、ソファスペースなどがある子供の屋内遊び場。子供がリラックスできる効果があるという。



リビングと呼ばれている職員室。職員がリラックスするスペースという。日本の職員室とは雰囲気が全く違う。


その後、食堂へ。教室でなく食堂で全員で食べる方式。自校調理でつくりたてである。全て無料。


給食をとるために並んでいる生徒たち。



私も行列に並んでいただくことにします。



この学校では好きな食べ物を好きなだけ自由に入れることができます(おかわりも自由)。学校によっては給食の担当者から個別に入れてもらう方式もあるといいます。



東洋から来た外国人の大人がいても、ほとんど動じません。手を振ったりして愛想よく笑ってくれるものの非常に落ち着いています。緊張ではありません。日本なら相当騒いでいるでしょう。



給食内容は、牛乳、野菜サラダ、ポテトとベーコンのグラタン、ライ麦入りの薄いパン



大食堂の雰囲気もすごく落ち着いています。



フィンランドのしつけでは、「食べ物はいくらとってもいいが、残してはいけない」というのが一般的らしいです。大柄や大食いの人はたくさんとるというのが平等で、日本の小学校給食のように体格が違っても、おかずの量がほぼ決まっているというのはこちらでは平等ではないということです。文化の違いですね。


その後、教室に戻り、現場見学を受けて、レバニエン先生と質疑応答。時間をとっていただき、丁寧に答えていただきました(ただし日本でも導入されつつありますが、視察受け入れは無料ではありません。念のため)。


質疑応答の模様。熱心なやりとりが繰り広げられました。



(教育の方針)
Q.PISA評価など世界的に非常に高い評価を受けているフィンランドの教育だが、どんな考えで教育に臨んでいるのか?
A.教育は国(文部省)の指針で基本的な方針が定められ、市町村がそれに追加して具体的な教育方針を決めることになっている。ヴィヒティ市の基礎学校の教育方針は、(高レベルの教育をしようという考えではなく)『未然に防ぐ』ということである。「予防する」「孤立を防ぐ」「落ちこぼれを防ぐ」「多動児の悪化を防ぐ」などとも言える。例を挙げると、以前、学校で孤立していた子供が(凶悪な)大事件を起こした。自治体にとって、そうした事件が起きるとお金やコストが発生することになる。その将来負担を減らすために教育があるということである。

ビィヒティ市のホームページ参照。学校の方針の参照や各種申し込みが可能。

Q.フィンランドの教育の質が高い理由は何だと思われるか?
A.子供は1人1人違う。それにあわせて教え方もいろいろである。教育の計画を立てる時にそれを考える。子供が困っているときに、なるべく早く気づくこと。そしてその対策の計画を立てる。教室や図書館、環境など全て使うことを考える。最近では何人かで1つのことに取り組ませるグループワークを活用することが多い。

(校長)
Q.校長の権限や身分はどうなっているか?
A.自治体により違うが、本市の場合、教員出身で立候補制である。それを市教育当局が選考の上、市長が任命する。校長も自治体の職員である。本市の場合、1年以内の臨時職員の任用は校長に権限がある。また校長には予算を使い切る義務があり、現場の教師よりも、予算を使ったり学校を運営していくマネージメント能力が問われる。現在の本校の校長は男性。子供育成の専門家だが、事務能力が高く、チームを作って対応するのがうまい。先日入学式があったばかりだが、校長は一人で、どんな生徒がどこからくるかを学校の門の前に立ってずっと見ていた。本校の場合、学校の規模が大きく、校長の仕事は大変だと思う。ただ職員組合だけでなく、校長組合もあり、横のつながりもある。

(予算)
Q.私は教員の給与を負担している県という自治体からやってきたが、県予算の4分の1は教育予算である。市の教育予算はどうなっているか?
A.市議をしているのに金額がわからなくて恐縮だが、教育予算の比率は、社会福祉につぐ第2位の比率である。

(進学・進路相談)
Q.進学等について教えてほしい。
A.本市には高校が1つある。進路相談は教師の仕事ではなく、別の相談員が担当している。責任もない。進学実績は教師が評価される対象でもない。(普通高校の場合)進路相談員、(職業学校の場合)職業相談員、心理士などが担当している。生徒は進学先を第一志望から第五希望まで5つ書く。入学試験はないが、高校側が、求める基礎学校の成績(平均評定)の条件を出しているので、その条件に合う高校を生徒が選択する。住んでいる自治体だけでなく、全国の高校に進学することもできる。その場合、住んでいる自治体がその自治体外の高校に対して学費を払うことになっている。

(健康管理)
Q.日本で私の妻は保健室を担当する教師をしている。近年保健室に来る生徒が増えている。この学校では保健の担当は何人いるのか?
A.小中あわせて1人である。

(参考)フィンランドでは国連でも高く評価されている母子相談システムがある。これは高校までの子供の健康を国が管理しており、データは学校に全て揃っている。そのデータにあわせて学校でも生徒の健康管理に対応している。

(体罰・規則)
Q.暴力や非行、問題行動を起こす生徒対策は?
A.日本からは教師が視察に来ることもあり、答えると驚かれるのだが、日本とフィンランドでは非行の定義そのものが全く違う。例えば、フィンランドでは男女の交際については全くの自由であり、日本のような不純異性交遊といった話は全くない。非行という話なら、私のクラスでも先週授業を抜け出して昼に美容院に行き、パーマをあてていた生徒がいた。呼び出して直接指導を行った。学校の規則を守るのは当然で、守れない生徒については処分もある。

Q.どういった処分なのか?
A.例えば、給食の食器洗いや片付け、清掃をさせる罰がある。また、悪質なものについては1週間の休学処分などもある。(その後、給食時に実際に給食室の後片付けをしている生徒を発見)

Q.日本では体罰が禁止されているが、フィンランドでは体罰はあるのか?
A.暴力は法律で禁止されている。体罰をすれば、教師が刑務所に行くことになるでしょう。

(特殊学級の教育)
Q.日本では特殊学級の教育の充実が求められている。フィンランドではどうなっているか?
A.特殊学級[知的障害、自閉症、多動性障害ADHDなどの生徒]を校舎の端に追いやるのではなく、他の生徒となるべく同じように教育ができるようにしている。中程度の障害児クラスでは、生徒は5人に対して、教師1人、助手4人で担当している。また、多動児の教育も(教師を多く配置する必要があり)コストがかるものである。教育によって普通学級に戻れるようにしたり、悪化を防ぐようにしている。多動性障害は増加傾向にある。保育園(託児所)や就学前施設(学校に入る前の1年間集団生活に慣れさせるための施設。非義務教育)から基礎学校へ送られてくる生徒の健康データから把握できるが、学校でも多動性について再度判定するようにしている。


(保護者・モンスターペアレント問題)
Q.保護者との連絡等はどうなっているか?
A.文部省の規定でも保護者との連絡は教師の義務とされている。保護者向けの授業参観や生徒のことについて学校で個々面談することもある。ただ、最近は個々面談にかわってインターネットを利用してメールなどでやりとりすることも多くなってきた。生徒が学校を欠席する場合に、保護者は学校に連絡する義務がある。今ではインターネットで連絡をするようになっている。

参考−フィンランドは韓国と並び高速インターネット回線の普及率が世界的で最も高いレベルにある。

Q.日本ではモンスターペアレントが問題になっているが、フィンランドではそのような問題はないか?
A.あまり大きな問題ではないが、文部省に直接メールしたり、学校にこういう問題があるなどと新聞に投稿したりする保護者もたまにいる。私は、学校の責任は何なのかということを常に考えており、こうした保護者の問題行動については、親に(よくないと)教えないといけない。一般的には、入学すぐの1〜2年生の保護者は教育に非常に熱心だが、学年があがるにつけ、次第に興味が少なくなっていく(笑)。

Q.日本では子供のしつけや社会常識を教えるのも学校という話が出ている。こちらではどうなっているか?
A.私が教師になって15年。社会は変化しているものの、子供のしつけは家庭に責任があり、学校はその補助をするところである。そのため、学校の敷地外で子供が万引きをしたとしても、学校にその連絡は来るが、学校に責任はないし関係もない。ただ、最近学校の役割が増えてきている感じはする。

(放課後)
Q.フィンランドでは共働き率が非常に高いが、子供たちが学校から家に帰ると家に誰もいないのではないか?
A.学校の放課後は様々なクラブ活動がある(教師ではない別の指導者がいる)。1〜2年生の場合、学校側が放課後の面倒を見る義務がある。3年生以上は、家に帰る子供も多い。私の子供も3年生だが、家でしっかり留守番をしてくれており、宿題をすませていれば遊んでいてもいい(笑)。

(学校・通学路の安全)
Q.日本では刃物を持って学校に侵入し、殺人事件をおこしたり、通学途中に連れ去られて殺される事件も少なからず起こっており、不審者対策に頭を痛めている。当校の場合、教室や建物のドアの開閉にセキュリティがかかっているものの、外部からの進入はフェンスも低いし、そんなに難しくない感じである。そのあたりの状況についてはどうか。
A.フィンランドでは、学校に防犯カメラを設置している。また、学校内には大人が多くいるので、不審者の侵入に気づく。先日、他の学校の生徒が本校内に紛れ込んでいたのにもすぐ気づいた。ただ、数年前にある高校で女性校長が銃で射殺されるという事件が起きた。その際に、国内で安全対策に関する議論がおこり、ガードマンの配置も検討されたが、議論の結果、まだその必要はないという結論になった。

Q.日本では通学・下校途中に暴漢に襲われるなどの事件が続出したことから、通学路の”見守り隊”として地域住民の方に協力してもらったりしている。フィンランドではどうか?
A.子供は徒歩のほか、自転車・バス・タクシーなどの交通機関で通学している。通学時間も自分のクラスの時間割、曜日によって8、9、10時など様々であるが(毎日同じ人と集団登校できる環境にない)、ここではそのような事件がない。そのようなものは要らないし考えられない。

(地域とのつながり)
Q.学校と地域とのつながりはどうなっているか?
A.(はじめはこの質問の意味が理解してもらえなかった。日本の自治会組織などとの関係を聞いたものと推測される)
先ごろ、この町が誕生500年で祭りをやったのだが、1年間この町をテーマに授業を行った。音楽の授業で老人ホームの慰問をしたり、有名人の生誕記念の時に出向いて演奏をしたりする。


そろそろ午後の授業がスタートする時間に



レバニエン先生は今年秋に予定されている2回目の市議会議員選挙に再出馬の予定。我々との写真も選挙に使うと言って笑っていました。教師は人気、倍率ともに非常に高く、国民から尊敬される職業だそうです。


(参考)フィンランドの永住市民権を持つ現地通訳Mさんの話。
(PISA)PISAの好成績以降、世界各国から視察団が来るが、現場の教師は高得点の理由を問われて「わかりません」と答える場合も多い。他国のことを知らず、普通のことをやっているだけと思っているのである。(高校)高校にクラスはなく、単位制である。級友がいないので悩みを抱える生徒がいても先生はわからない。少し前に高校で銃発砲事件があり世間を驚かせた。高校までの学校は市町村立。大学は国立。給食は小中では義務で全てあるが、高校はあるところとないところがある。(通学費)通学費負担も自治体の義務。乗り合いタクシーで通う生徒もいるが、これも自治体負担である。(私立学校)自治体が整備すべき教育環境を私立が代わりに行っているという考えがあるため、私立学校の授業料も基本的には自治体が持つ。しかし、財政難やカリキュラムの問題もあるので、生徒の自己負担がある場合もある。自治体によって違う。(塾)日本から教師が視察に来て、フィンランドの教師に質問することの中で、塾についての話も多い。するとフィンランドの教師は「なぜ塾が必要なのか」と逆に驚くのである。「学校で教えたこと以上の内容を大学が入学試験で出すのなら、その大学は間違っている」とはっきりいう。学期は8月中旬に学年スタート、5月末学年終了である。この夏休みは宿題もないし、登校日もない。教師も登校しないし、別荘に長期休暇したり、別にアルバイトする人もいる。教師のアルバイトは禁止されていない。定年は65歳である。その後、年金が支給される。年金は現役時代の50〜70%の収入になる。他の職業も同じだが、軍人は50歳ほどで定年となる。


その後、フィンランドにおける職業教育施策と現地調査のため、AMUEDU(アミエドゥー。成人向け職業教育センター)。


ヘルプネン活動部長から説明を受けた後、質疑応答。以下そのやりとりをまとめたもの(文責:竹内)。


アミエドゥーは政府の労働力政策の一環として設立されている成人用職業学校。フィンランドではでは就学前教育1年。その後、9年生までが義務教育。その後、普通高校または職業学校に行くことができる。その後、大学または職業大学へも進むことができる。ここアミエドゥーは職業高校を卒業または既卒業者(就職者)、無職者向けの講習を行っている。講習を修了すると職業についての免状がもらえる。この免状で職業についてもいいし、職業大学にも行ける。

講習は1日2日と非常に短い講習もあれば、何年もかかるものもある。この国では、卒業資格だけでなく実地試験を受けて免状をとっておくと職業に就きやすい。職業学校を出れば基礎免状がもらえる。しかし、例えば溶接の職業についていたとしても、この学校で余計に「特殊」溶接などの別の免状がとれる。この免状で係長などの管理職掌につけることにも可能になる。フィンランドでは350の資格がある。実地試験は、実際に働いている人の前で、試験官が問題を出す。試験は実際の職場で行われるので採用にもつながりやすい。

この組織は30年以上活動している。成人職業学校としてはフィンランド最大である。ここの年間予算2500万ユーロ(42億円)。基金を設立したのはヘルシンキ市など4市。4つのキャンパスにわかれている。100メートルほどの近くに2つ、もう一つは東ヘルシンキにある。去年の例では、生徒数は18000人。ここで講習を受けられる職種は約80。特殊な免状も発行できる。火をつかうとか特殊なものもある。講師(職員)は350人。あとは各業界の現場からスペシャリストを呼ぶ。

学費を全額文部省がみる受講者は全体の31%。また、実際に仕事についている人で、4日現場で働き、1日はここで勉強する(技術がまだ未熟な)人も文部省が費用を見る(24%)。5%は職場が全額負担している人である。ほか37%は労働力政策に基づいて勉強している人、つまり、ほとんどが無職・失業者である。このうち67%がフィンランド人、33%が難民である。難民のための教育としてフィンランド語、風習等も教える。他に職場を変えるための再教育もある。レジ係りで金属アレルギーであるとお金がさわれないので職業を変える必要があるなどである。企業側がスキルを向上させるための講習もある。この場合、費用は国が半分、企業が半分をもつ。


看護・福祉講習の現場を見学させて頂く


ここは大人の学校で、最低でも職業学校の卒業者である。ここで勉強すれば必ず就職できるということが目標である。経営教育もある。職業教育の世界は競争が激しい状況にある。つまり、文部省、労働省からお金をもらっているが、経営の違う他の学校と競争してもらってくるお金なのである。場合によっては、他の学校との差別化を図らないといけない場合もある。得意分野としては、経営学。企業の要望に応じて、相談に乗る。また、教育内容として、計画から実行、製品を作るというところまで一貫して教育しているのも特徴。教育の方法として、講師陣がその人にあった教え方をする。お客さんに提供するサービスは教育。その内容は、費用をどこから調達するかまで相談に乗る。連絡も密。大得意先にはセールスマンとして一人担当させている。

講習内容は、福祉、栄養学、清掃、商業(売場、現場主任、雇用技術)、経営学(独立者向けも)、情報伝達(コンピューター、配線技術)、企業安全職員(ガードマン、秘密漏洩防止専門員)、不動産関係職種(建物の設計、メンテナンスも含む)、電気工事関係など。

この学校の場合、首都圏で必要とされる職種や人数しか講習を実施しないし、試験は現場で採用側も一緒に試験をするので(職業高校は実際の現場で試験はしない)、就職率は結果的に高くなるということである。

この国は充実した雇用保険制度と合わせて、再就職の斡旋でも本当に手厚いと思う。これは日本の租税負担では真似できないレベルである。


フィンランドの国会議事堂。第2代国会議長の銅像


その後、在フィンランド大使館の参事官、一等書記官と合流。フィンランドと日本の関係や実情などを伺う。
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